TOKIWA
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連載・第一篇 SERIES PART I
巻第七 第三十六

上野国一宮抜鉾大明神

Kōzuke Ichinomiya Nukisaki Daimyōjin-ji — Shintōshū, Vol. VII, No. 36
典拠神道集 巻第七 第三十六
著者渡邉 朱鷺
巻第七 第三十六 上野国一宮抜鉾大明神事
原 典

抑、上野国一ノ宮抜鉾大明神と申すは、赤城大明神が一宮なりしが、今は赤城は二宮となり、他国の神なる抜鉾大明神が一宮となり給ひた。

赤城大明神が絹布を織て居たるに、絹笳不足し、狗留吠国の好美女に絹笳を求め、女は絹笳を与へ、赤城は女の婿となりしが、女は赤城の嫉妬により抜鉾大明神となりし事なり。

本地は大日如来なり。本地垂迹の理を明らかにし、神仏一体の証なり。

【要 約】

もとは赤城大明神が上野国一宮だったが、今は抜鉾大明神が一宮となっている。赤城が絹布を織る際に異国(狗留吠国)の美女から絹糸を得て婿入りしたが、赤城の嫉妬により美女が抜鉾大明神として顕現したという縁起。本地は大日如来。赤城との一宮争いと異国美女の本地譚が特徴。

【注記】

抜鉾大明神(貫前神社、群馬県富岡市)は現在も上野国一宮として知られる。「狗留吠国」という異国設定は神道集に特有の唱導的誇張で、渡来系氏族(物部氏の流れとも)の神を異国の神と読み替えたものとみられる。嫉妬による神格化は橋姫・玉津島など女神縁起の類型と共通し、一宮争いという政治的文脈を物語的に包んだ形式は在地の神社権威を仏教的に正当化する典型例。上野国グループ(赤城・伊香保・覚満・那波など)の一員として連動する縁起群の一部を成す。

── 本地仏対応表 ──
前生の姿(因位)顕現先・場所本地仏
異国美女(狗留吠国)抜鉾大明神 貫前神社大日如来