TOKIWA
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連載・第一篇 SERIES PART I
巻第三 第十四

稲荷大明神

Inari Daimyōjin-ji — Shintōshū, Vol. III, No. 14
典拠神道集 巻第三 第十四
著者渡邉 朱鷺
巻第三 第十四 稲荷大明神事
原 典

稲荷明神は、上御前は千手、中御前は地蔵、下御前は如意輪観音なり。

或る人の日記によると、下御前は如意輪、中御前は千手、上御前は命婦にして辰狐なり。本地は文殊なり。

稲荷大明神は宇迦之御魂神なり。本地垂迹の理を明らかにし、神仏一体の証なり。稲荷は五穀豊穣・商売繁盛の神なり。

【要 約】

稲荷明神三社の本地仏を列挙する。上御前=千手観音、中御前=地蔵菩薩、下御前=如意輪観音とする説と、上御前=命婦(辰狐)で本地は文殊菩薩とする異説を並記する。稲荷大明神の本体は宇迦之御魂神とし、五穀豊穣・商売繁盛の守護を説く。

【注記】

伏見稲荷大社(京都市伏見区)の三社(上社・中社・下社)の本地を複数の説を引用して列挙する形式は、稲荷信仰の重層性を示す。辰狐(白狐)と文殊菩薩の習合は密教の影響を受けたもので、狐を仏法護持の使者とみる観念に基づく。秦氏の農耕守護神から出発した稲荷信仰が中世に商業・工業へと神格を拡大した過程を反映している。

── 本地仏対応表 ──
前生の姿(因位)顕現先・場所本地仏
上御前上社千手観音(異説:命婦・辰狐、本地文殊菩薩)
中御前中社地蔵菩薩(異説:千手観音)
下御前下社如意輪観音(異説:如意輪観音)