TOKIWA
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連載・第一篇 SERIES PART I
巻第七 第四十

赤城大明神

Akagi Daimyōjin-ji — Shintōshū, Vol. VII, No. 40
典拠神道集 巻第七 第四十
著者渡邉 朱鷺
巻第七 第四十 上野国勢多郡鎮守赤城大明神事
原 典

赤城大明神は上野国勢多郡に鎮座す。本地は千手観音なり。因位の昔は高野辺大将家成という公家がおりました。

家成は妻を娶り、二人の姫君を生んだ。姫君たちは美しく成長し、父の愛情を一身に受けた。しかし、家成は都に召され、留守の間に継母が姫君たちを虐待した。継母は姫君たちを殺そうと企て、毒を盛った酒を飲ませようとしたが、姫君たちは観音の加護により難を逃れた。継母はさらに姫君たちを山に捨てようとしたが、姫君たちは父の帰りを待ち、苦難に耐えた。

家成が帰国すると、継母の悪行を知り、激怒して継母を追放した。姫君たちは父の慈しみを受け、赤城山に登り、観音の本地として顕現した。

大沼は赤城御前、小沼は高野辺大将、禅頂は覚満淵として三所に顕れ、沼神として鎮座した。赤城大明神はこれらの本地を有し、上野国の鎮守として万民に利益を施している。これより赤城大明神の社殿を建立し、祭祀を営んでいる。

【要 約】

公家・高野辺大将家成の二人の姫君が、父の不在中に継母による毒殺・山中遺棄の企みにさらされるが、観音の加護により難を逃れる。帰国した家成が継母を追放したのち、姫君たちは赤城山に登って神として顕現する。大沼に赤城御前、小沼に高野辺大将、禅頂(覚満淵)に三所として鎮座し、上野国勢多郡の鎮守となる。本地仏は千手観音。

【注記】

「赤城山(あかぎやま)」は群馬県中央部に位置する複合火山で、山頂カルデラに大沼・小沼・覚満淵の三つの湖沼を持つ。この地形が縁起の「三所に顕れ沼神として鎮座」という記述と対応しており、在地の自然地形が神格の構造に直接反映されている点に特徴がある。

継母による迫害という物語構造は二所権現事(常在御前の三度の試練)・児持山大明神事と共通する。上野国グループ(赤城・伊香保・児持山)はいずれも「継母の悪行→観音の加護→山への顕現」という共通の縁起の型を持ち、姉妹・家族関係でつながった連続した物語として描かれている。

── 本地仏対応表 ──
前生の姿(因位)顕現先・場所本地仏
高野辺大将家成の姫君たち赤城大明神(大沼・赤城御前)千手観音
高野辺大将家成小沼
(三所権現)禅頂・覚満淵